バーニングマンに行ったときの話

アメリカネバダ砂漠のアートフェス、バーニングマンがコロナで中止、の代わりになんとバーチャル上で開催されるという。

バーニングマンに初めて行ったのは、15年前の2005年。(ちなみにあまりにも衝撃で最高に楽しかったため、翌2006年にも参加。)そんじょそこらの野外フェスとは比べ物にならない、全員参加型の砂漠のアートフェスという雑誌か何かの紹介を目にしたのがきっかけだったと思う。直感的にこれは行かねば、と思い立った。

2005年当時は、大学生でファッションテックの研究をしていて、SIGGRAPHというコンピュータグラフィックス学会のウェアラブルファッションショーに出すべく、研究室チームでLEDやセンサーが仕込まれた服を作っていたのだった。ウェラブルファッションショーの作品はだいたいLED服ばかりなので、文字通り綺羅びやかすぎるwランウェイを歩いた後、ファッションショーのオーガナイザーでもあり、ヘッドマウントディスプレイを被りながら司会していたお姉さんに話しかけると…ロサンゼルス在住のアーティストでバーニングマンは常連らしい。「あなたもバーニングマン来るのね!私達はチェシャ猫のアートカーを作っているの。1ヶ月後プラヤで会いましょう!」

再びロサンゼルス経由で今度はリノ空港へ。ここもじつはラスベガスのようなカジノ街で街中がイルミネーションでギラギラしていた。この街で10日分の食料や水を買い込み、砂漠で走る用の自転車も車に乗せてバーニングマン会場へ向かう。

「WELCOME HOME!(おかえりなさい!)」と声をかけながらゲートをぐぐるやいなや、数メートル長の巨大な海賊船アートカーが後ろをつけてくる。すでに夕刻。光るインスタレーションが会場内に点在し、LED服を当たり前に着こなす人、ディズニーランドのエレクトリカルバレードみたいなアートカーが砂漠を走り回っていて、リノのカジノ街とほぼ遜色なく…この電気、それぞれ自活しながらここまでやるのか…とマジで驚愕した。

翌日からは、いたるところにアートインスタレーションがある砂漠の会場をチャリで巡った。アートといっても延々と解説があるような難解な現代アートではなく、ぱっと見、いかに凄いか、目立つか、ウケるか的なわかりやすいアートばかりだ。会場の広さは山手線沿線内とほぼ同じという。が、これも2005年当時の話で、最近は来場者数の倍増とともに会場もさらに倍になっていると聞く。

そしてついに見つけた!ディズニーランドのパレードに出てきそうな不思議の国のアリスに出てくる猫!これを毎年走らせているというウェアラブルファッションショーのオーガナイズチームとの再会を喜んだ。そしてメンバーの一人から「これ、自分でモデリングして3Dプリンター出力したんだ。」と樹脂の貝と粉塵マスクをプレゼントしてくれてね。

3Dプリンター黎明期。モデリングと出力された樹脂ものに触れて、なんというか衝撃だった。あー、もうデータなんだ、と。10年後くらいはは一家に数台くらい3Dプリンタがあってデータだけ買って家庭で出力するのかな、とか、もはや買い物=データ出力行為になるのかな、とかデータの権利とか、とにかく凄い世界がやってくるのだなと。(その15年後の今は…ハンコ文化をデジタル化する仕事を勤しむ私がいて…思ったのと全然違ってたけど。)

「また来年もプラヤで会おう!」と彼らと約束して、3Dプリンタの圧倒されるようなヴィジョンを考えつつ、中央のマンが併設されている建物に自転車で向かった。建物内にもメディア・アートのインスタレーションがあったので、燃える前に見ておこうと向かったのだった。

行く途中で突如、砂嵐に襲われ、すかさずプレゼントされた防塵マスクでなんとか凌いだ。そしたらその砂嵐から突如ロボットが現れて握手を求められてね。なんかもう…スターウォーズの世界みたいな光景だった。GoogleやAdobe社員は社員旅行でここに来て、こういうロボットやインスタレーションを作っていると聞く。

そうそう。今日は何の日?にあわせて変化するGoogleロゴアートは、Google創業者のラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンがこの会場に来ていることを知らせるために始めたのが最初らしい。

こういう形で、ロボットやリアル猫バスみたいなアートカーに遭遇し、突然スターウォーズのライトセーバーが大量に配られてみんながチャンバラごっこし始めて、あそこでアイスが配られてるよ!と聞いて駆けつけるとすでに終わっていた、というように…すべて突発的で、同じ期間同じ会場にいても同じ経験ができるかもわからない。巨大なアトラクションも突然閉鎖も想定のうえで遊ぶっていう。誰一人被らないオリジナルな経験をするんだよね。だからこそ増え続ける参加者とリピーターで年々巨大になって行くのだと思う。

そんなわけで、バーニングマンって何って言われたら、ソーシャルディズニーランド、って答えている。ディズニー社やオリエンタルランド社が企画して提供するアトラクションをお金を払って楽しむのがディズニーランドだとしたら、そのソーシャル版という感じだろうか。No Spectator(傍観者になるな)というポリシーがあってね。ディズニーランドみたいな世界を、参加者が勝手に自立分散的に作り上げるのを実験しているのがこのバーニングマンなのだ。それもスケールがイチイチでかい。空に飛行機でお絵かきしてみました、とかw。

ちなみに、私自身何をやったのかというと…初年度は行くだけでいっぱいいっぱいだったが、2006年は、バーニングマン型の光るLEDネックレスづくりワークショップを開催した。わざわざ電気を使わないポータブルハンダコテを持ち込み、LEDや基盤を持っていてその場で作り方をレクチャーしたのだった。参加者はたった数人だったが、アメリカ人のカップルが参加して喜んでくれて凄く嬉しかった。現地のロス在住の人にくらべて日本人はフライトがあるのでなかなかデカイことはできないが、砂嵐の中、白無垢で結婚式あげたり、御抹茶たてたり、お神輿かついでたりして、それぞれなかなか凝ったことをしていた。

砂嵐が来てロボットに遭遇した後に向かったマンの建物は、すでにロープがはられて立ち入り禁止になっていた。夜に燃やすイベントにあわせて花火や爆薬を仕込むのですでに閉鎖したというのだ。キャンプファイヤー的に燃やすのかと思ったが、やはりスケールが桁違いだった。あの実験精神マインドとスケールのデカさ…多感な学生時代にこれを経験した私はその後もバーニングマンに限らず、アメリカ西海岸の色々な実験施設やコミュニティみたいなところに足を運ぶことになる。

動画は2019年のもの。そして2020年、史上初ヴァーチャルバーニングマンですが、日本のバーニングマンリージョナルコミュニティのかたがたによる参加方法がまとめられています。私は一度リアルに行っているので懐かしい!という感じなのだが、いきなりヴァーチャルに行った人はどういう印象を持つのだろうか。その点とても興味がある。