未来のファッションのプロトタイプをつくる

大学のファッションテック研究:ウェアラブルコンピューティングとファッション表現 の続き

数十年後のライフスタイルをデザインしたいという思い。とりわけファッション分野の新しいキーになるテクノロジーとして、テキスタイルの可能性を見出し、一気に研究を加速させていく。

プロトタイピングという考え方

パソコンの原型を示した伝説のDemo

Demo or Die(デモか死か)-アイデアを視覚的にデモンストレーションできなければまったく意味がないという考え方。1968年ダグラス・エンゲルバートによるパソコンの原型を示した伝説のデモが有名でその後のパソコンの発展に大きく寄与しました。大学でもそれに倣い、実際に動く試作品-ワーキングプロトタイプを作らなければ研究として、もちろん単位として評価されませんでした。

柄や模様がダウンロードできるような布型コンピュータに焦点をあわせ、ものづくり試作の日々がはじまりました。

就活が本格するなか、直感を信じ、電子工作、プログラミング、織り機、液晶、化学薬品との格闘していて…大学院行きを決定したのが大学3年の秋。

幸いなことに、大学生でも研究資金が潤沢に使える環境になっていて、素材やパーツ調達ができて色々な実験できた。自分の研究もあるでしょうに、研究に没頭できる環境づくりや予算取りに奔走してくれた教授には本当に感謝している。

秋葉原に通う

東急ハンズ、ホームセンター、ユザワヤは、序の口。そして通いまくった電子工作パーツの聖地、秋葉原。

とりわけ総務線高架下が並ぶ一坪露天パーツ屋さん。次第に顔馴染みになったおっちゃんには、電子工作の回路設計の知識がまるで乏しいなか、回路図を書いて貰って助かった。

電子パーツぐらいネット通販でフツーに買えるのよ。でもわざわざ行くのは、モノ以上の知識、知恵。どういうモノを作りたいのか、何が目的なのかを、パーツ売り場のおっちゃんと会話して、最適なモノを選定してもらい使い方も教えてもらう。

あそこは、電子版の魚河岸(うおがし)だと思う。私が足繁く通ったのは、寿司職人がわざわざ築地に魚を仕入れにいく感覚に近いはず。

そして織りの世界へも

基本的には、縦糸と横糸を織ることで布を作るこの織りの技術。
だが、別に糸でなくてもいいわけで…導電糸(電気を通す糸)やら、センサーやら電子パーツやら色々織り込む実験を繰り返す。理想の織りを目指すべく、織り機も自作した。

プログラミング、電子工作はなんとかなりそうだったが、問題は液晶、ケミカルの分野だった。化学メーカーや研究所に手当たり次第、一件一件、電話やメール、必要あれば、対面で企画をプレゼンしながら提供の交渉にあたった。
学生と見下され、商品を購入すらさせてくれないところもあれば、夢があると無償提供して全面協力をしてくれたメーカーもあった。

ギーク女子が本気を出すと部屋もこうなる。

電子制御で色を変化させるテキスタイルの試作品をつくり、さらにそれを学会や展示会に発表するため、ムービー撮影、編集、英語論文なども書いたり読んだり…あとは、ベンチャー会社でWEBのバイトはしていたが…あとはクラブへ遊びはいったか(笑)

この期間、家に帰った記憶がほとんどない。それくらいものづくりに没頭していたが、”お勉強に専念”している感じもなく、私のなかでは遊びに近くて。未来を作っている感じがしてワクワクしたのですよね。

コンピュータで色を制御できる布のプロトタイプ

できれば、電子ペーパー、Einkのように瞬時に色を切り替えたいところだが、布の質感を保つこと、非発光での変色制御を最低限満たす形のダーティープロトタイプ。温度で色が変わる特殊なインクや導電性繊維を織り込んだテキスタイルが出来上がった。

汚さ、雑さは承知の上だが、机上のアイデアではなく、実際に手を動かして作りながら、手に身体に考えてもらう感覚は非常に面白くて。

そして、この先のカギは液晶にあると思えた。液晶が専門の教授に技術的な相談だったり、加えて大学院の進路の相談もしていた。例えばガチの化学系の大学院に進み、液晶から研究できるか、みたいな相談をメールで投げかけていて。

そんな折、とある教授より一通の思いがけない御返事をいただく。

「液晶を研究して数十年たつが布に応用する発想は思いもつかなかった。とても大きな可能性があります。今の試作品も早く特許をとることをおすすめします。」

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